神経系は、中枢神経(脳および脊髄)と末梢神経に分けられ、後者はさらに体性神経系(知覚神経および運動神経)と自律神経系(交感神経および副交感神経)に分けられます。
糖尿病では、末梢神経系の障害が多く、それには、代謝障害と微小血管障害による循環障害とが関与していると考えらます。末梢神経の細胞は、長い軸索と突起(神経線維)をもち、その周囲を髄鞘とシュワン細胞が取り囲んでいます。糖尿病では、この軸索と髄鞘に変性と脱落がおこり、侵された神経やその部位によって、多彩な神経症状を示します。
多発性神経障害が頻度的に最も多く、知覚障害のほうが、運動障害よりも多く見られます。しびれや痛みが四肢(手足)末端から始まり、左右対称性に広がっていき(靴下型、手袋型)、通常は、まず足先や足底部に症状が出現してきます。
単一神経障害として、大腿(太もも)や腓骨・尺骨・正中・撓骨(とうこつ)神経が犯されやすく、それぞれの神経支配領域に疼痛、脱力、知覚異常などがでてきます。動眼神経や外転神経も多く、外転筋まひ、複視、眼瞼下垂などの症状が見られます。
自立神経障害は見過ごされやすいのですが、糖尿病にかかっている期間が長くなると、多彩な症状をともない、患者さんに苦痛を与え、生活に支障をきたすほどになることもあります。
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